Blog · The Tell-Tale Heart

『告げ口心臓』の英語を読む(3)警官と心臓の音

2026.10.28

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はじめに

ポーの『告げ口心臓』の英語を読むシリーズ、最終回です。前回は、8日目の夜、語り手が老人の目に光を当て、しだいに大きくなる心臓の音を聞く場面を読みました。

語り手は老人を殺し、床板の下に隠します。今回は、夜明け前に訪ねてきた警官たちを語り手が迎え入れ、物語が結末へ向かう場面の英語を読みます。

1. for what had I now to fear? ―「今さら何を恐れることがあろうか」

As the bell sounded the hour, there came a knocking at the street door. I went down to open it with a light heart,—for what had I now to fear?

意味: 時計の鐘が時を告げたとき、表の扉をたたく音がした。私は晴れやかな気持ちで扉を開けに降りていった。今さら何を恐れることがあろうか

there came a knocking は「たたく音がやって来た」、つまり「扉をたたく音がした」。there was と同じように、there came で「〜が来た、〜が起きた」を表します。

with a light heart は「心も軽く、晴れやかな気持ちで」。反対は with a heavy heart(重い心で、沈んだ気持ちで)です。

for what had I now to fear? の for は「なぜなら」。what had I to fear? は、今なら what did I have to fear? と言うところです。「恐れるべき何があっただろうか、いや何もない」と、答えを期待しない反語の疑問文です。語り手はすっかり安心しきっています。このすぐあと、警官たちを前にして、同じ言葉 for what had I to fear? をもう一度くり返します。

使い方の例:

  • There came a sound from the kitchen.(台所から音がした)
  • She left home with a heavy heart.(彼女は沈んだ気持ちで家を出た)
  • Who knows what will happen?(何が起こるか、誰に分かるだろう)※反語

2. The shriek, I said, was my own in a dream. ―「あの悲鳴は、夢の中の私の声だと言った」

I smiled,—for what had I to fear? I bade the gentlemen welcome. The shriek, I said, was my own in a dream. The old man, I mentioned, was absent in the country.

意味: 私はほほえんだ。何を恐れることがあろうか。私は紳士たちを歓迎した。あの悲鳴は、夢を見て私があげたものだと言った。老人は田舎に出かけていて留守だ、とも話した

近所の人が夜中に悲鳴を聞き、警察に知らせていたのです。

bade は bid の過去形で、bid ~ welcome は「〜を歓迎する」という古い言い方です。

The shriek, I said, was ... は、I said を文の途中にカンマではさんだ形です。I said (that) the shriek was my own in a dream. と同じ意味ですが、I said を挟むことで、語り手が言ったうそがそのまま耳に届くような書き方になっています。The old man, I mentioned, ... も同じ形です。

my own は「私自身のもの」で、ここでは my own shriek(私自身の悲鳴)のこと。absent は「不在の、留守の」です。

このあと語り手は、警官たちを老人の部屋に案内し、遺体が隠された床板のちょうど真上に、自分の椅子を置きます。perfect triumph(完全な勝利)に酔っているのです。

使い方の例:

  • The problem, he said, was very simple.(問題はとても単純だ、と彼は言った)
  • This bag is my own.(このかばんは私のものです)
  • She was absent from school yesterday.(彼女は昨日学校を休んだ)

3. I felt myself getting pale and wished them gone ―「顔から血の気が引くのを感じ、早く帰ってほしいと思った」

The officers were satisfied. My manner had convinced them. I was singularly at ease. They sat, and while I answered cheerily, they chatted of familiar things. But, ere long, I felt myself getting pale and wished them gone.

意味: 警官たちは納得した。私の態度が彼らを信じさせたのだ。私は不思議なほど落ち着いていた。彼らは腰を下ろし、私が陽気に答えるあいだ、身近な話をあれこれとしゃべった。だが、ほどなくして、私は自分の顔から血の気が引いていくのを感じ、彼らに早く帰ってほしいと思った

had convinced は過去完了で、警官が納得した「それより前に」、語り手の態度が信じさせていたことを表しています。convince は「納得させる、信じさせる」。at ease は「くつろいで、落ち着いて」。singularly は「並外れて、ひときわ」です。

ere long は「まもなく、ほどなく」という古い言い方です。ere は before の古語で、ere long は before long と同じ意味です。

feel oneself ~ing は「自分が〜していくのを感じる」。getting pale で「青ざめていく」。

wished them gone は、wish +人+過去分詞で「人が〜してしまえばいいと願う」。gone は「行ってしまった、いなくなった」状態なので、「彼らがいなくなればいいのに」という意味です。

ここから、物語は一気に崩れていきます。耳鳴りのような音は、しだいにはっきりしてきます。そして語り手は気づくのです。I found that the noise was not within my ears.(その音は、私の耳の中で鳴っているのではなかった)。

使い方の例:

  • His smile convinced me.(彼の笑顔を見て、私は納得した)
  • Please make yourself at ease.(どうぞ楽にしてください)
  • I felt myself getting angry.(自分が腹を立てていくのが分かった)
  • I wished him gone.(彼にいなくなってほしいと思った)

4. dissemble no more! ―「もうとぼけるのはやめろ!」

“Villains!” I shrieked, “dissemble no more! I admit the deed!—tear up the planks!—here, here!—It is the beating of his hideous heart!”

意味: 「悪党ども!」と私は金切り声をあげた。「もうとぼけるのはやめろ! 私がやったと認める! 床板をはがせ! ここだ、ここだ! あの忌まわしい心臓の鼓動だ!」

物語の最後の一文です。警官たちは、ずっと楽しげにおしゃべりを続けています。語り手は、彼らにはあの音が聞こえているのに、知らないふりをして自分の恐怖をあざ笑っているのだと思いこみます。

dissemble は「(本心を)隠す、知らないふりをする」。no more は「もう〜しない」。dissemble no more で「もうとぼけるな」となります。

admit は「(罪などを)認める」、deed は「行い」で、ここでは「犯行」のこと。tear up は「(床板などを)引きはがす」。

最初の一文で「なぜ私が狂っているなどと言うのか」と問いかけた語り手は、最後の一文で自ら罪を告白します。題名の tell-tale は「告げ口をする、秘密をばらす」という意味の形容詞です。秘密をばらしたのは、本当に老人の心臓だったのでしょうか。それとも、語り手自身の心臓だったのでしょうか。

使い方の例:

  • I will wait no more.(もうこれ以上は待たない)
  • He admitted his mistake.(彼は自分の間違いを認めた)
  • She tore up the letter.(彼女はその手紙を破り捨てた)

おわりに

3回にわたって読んできた表現を思い出しながら、ぜひ最初から最後まで通して読んでみてください。語り手の言葉のくり返しやダッシュに注意して読むと、その息づかいが聞こえてくるはずです。

これまでの記事:(1)「私は狂っていない」 / (2)8日目の夜

次回からは、10月29日に公開する名作ダイジェスト『オデュッセイア』第4話の英語を読みます。

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