Blog · The Tell-Tale Heart

『告げ口心臓』の英語を読む(2)8日目の夜

2026.10.27

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はじめに

ポーの『告げ口心臓』の英語を読むシリーズ、2回目です。前回は、語り手が「私は狂っていない」と言い張り、老人の「ハゲワシの目」を消そうと心を決めるまでを読みました。

7晩続けて、語り手は真夜中に老人の部屋をのぞきますが、目はいつも閉じていました。今回は、運命の8日目の夜の英語を読みます。

1. more quickly than did mine ―「私の手よりも速く動く」

Upon the eighth night I was more than usually cautious in opening the door. A watch’s minute hand moves more quickly than did mine.

意味: 8日目の夜、私はいつにも増して用心深く扉を開けた。時計の分針でさえ、そのときの私の手より速く動く

more than usually cautious は「いつも以上に用心深い」。in opening the door は「扉を開けるときに」です。

A watch’s minute hand moves more quickly than did mine. の mine は my hand のこと。than did mine は、than mine did の語順が入れ替わった形です。than のあとで主語と動詞が入れ替わるのは、書き言葉でときどき見られます。

時計の分針は、目で見ても動いているのが分からないほどゆっくり進みます。それよりも遅い、というのですから、語り手がどれほどじりじりと扉を押していたかが伝わります。minute hand の minute は「分」、hand は「(時計の)針」です。

使い方の例:

  • She was more than usually quiet today.(彼女は今日、いつも以上に静かだった)
  • Be careful in crossing the street.(道を渡るときは気をつけて)
  • The hour hand moves slowly.(時計の短針はゆっくり動く)

2. as black as pitch ―「真っ暗」

His room was as black as pitch with the thick darkness, (for the shutters were close fastened, through fear of robbers,) and so I knew that he could not see the opening of the door, and I kept pushing it on steadily, steadily.

意味: 老人の部屋は、濃い闇で真っ暗だった(泥棒を恐れて、雨戸がしっかり閉められていたからだ)。だから私は、扉が開くのを老人が見られるはずはないと分かっていた。私は扉を押し続けた。じわじわと、じわじわと

語り手が思わず含み笑いをもらし、老人が寝台の上で急に身動きします。それでも語り手は引き下がりません。

as black as pitch は「真っ黒な、真っ暗な」。pitch は、石炭などから作る黒いねばねばした「タール」のことです。as ... as ~(〜と同じくらい…)の形で、たとえを使って色や状態を強めます。as cold as ice(氷のように冷たい)なども同じ形です。

括弧の中の for は「なぜなら」。through fear of ~ は「〜を恐れて」。close fastened の close は「近い」ではなく、「ぴったりと、しっかりと」という副詞です。

keep ~ing は「〜し続ける」。最後の steadily, steadily のくり返しが、少しずつ扉を押し続ける動きそのもののように聞こえます。

使い方の例:

  • The night was as black as pitch.(夜は真っ暗だった)
  • Her hands were as cold as ice.(彼女の手は氷のように冷たかった)
  • He kept talking for an hour.(彼は1時間しゃべり続けた)

3. was about to open the lantern, when ... ―「ランタンを開けようとした、まさにそのとき」

I had my head in, and was about to open the lantern, when my thumb slipped upon the tin fastening, and the old man sprang up in bed, crying out—“Who’s there?”

意味: 頭を部屋に入れ、ランタンを開けようとした、まさにそのとき、親指がブリキの留め金の上ですべった。老人は寝台の上にはね起きて、叫んだ。「誰だ?」

be about to ~ は「まさに〜しようとしている」。そのあとに when ... を続けると、「〜しようとした、ちょうどそのとき…」と、予想外の出来事が起きる瞬間を表せます。物語でよく使われる形です。

slip は「すべる」。sprang は spring(はねる、跳び上がる)の過去形で、sprang up で「はね起きた」。crying out は「叫びながら」と、同時の動作を表しています。

このあと、語り手は1時間、筋一つ動かさずにじっとしています。I did not move a muscle.(筋肉一つ動かさなかった)は、「微動だにしない」という決まった言い方です。

使い方の例:

  • I was about to leave when the phone rang.(出かけようとしたとき、電話が鳴った)
  • The movie is about to start.(映画がまさに始まろうとしている)
  • He didn't move a muscle.(彼は微動だにしなかった)

4. It grew quicker and quicker, and louder and louder ―「ますます速く、ますます大きくなった」

Meantime the hellish tattoo of the heart increased. It grew quicker and quicker, and louder and louder every instant. The old man’s terror must have been extreme!

意味: そのあいだにも、心臓の地獄のような太鼓の音は高まっていった。一瞬ごとに、ますます速く、ますます大きくなった。老人の恐怖は、きっと極限に達していたにちがいない!

ついに開いた老人の目に光を当てたとき、語り手の耳に低く、くぐもった、速い音が聞こえてきます。老人の心臓の鼓動です。

tattoo はここでは「入れ墨」ではなく、「太鼓をたたく音」。もとは兵士を宿舎に呼び戻す合図の太鼓のことです。直前に、心臓の音が語り手の怒りをあおる様子を as the beating of a drum stimulates the soldier into courage(太鼓の音が兵士を奮い立たせるように)とたとえていました。

比較級 and 比較級は「ますます〜」。quicker and quicker(ますます速く)、louder and louder(ますます大きく)と二つ重ねて、迫ってくる音を表しています。

must have +過去分詞は「〜だったにちがいない」と、過去のことを推量する形です。

使い方の例:

  • It's getting colder and colder.(だんだん寒くなってきた)
  • Meantime, the rain grew heavier.(そのあいだにも、雨は強くなった)
  • He must have been very tired.(彼はとても疲れていたにちがいない)

おわりに

次回は、語り手が警官たちを迎え入れ、ふたたびあの音を聞く結末の場面の英語を読みます。前回の記事はこちらから読めます。

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