Blog · The Odyssey - Part 2: The Witch's Island
『オデュッセイア』第2話の英語を読む(3)魔女の魔法と死者の国
はじめに
名作ダイジェスト『オデュッセイア』第2話の英語を読むシリーズ、最終回です。前回は、人食い巨人の港で11隻の船を失い、たどり着いた島で部下たちが魔女キルケーに豚に変えられてしまうところまでを読みました。
知らせを聞いたオデュッセウスは、剣を手に、ひとりでキルケーの家へ向かいます。今回は、そこから第2話の結末までの英語を読みます。
1. do you no harm ―「あなたに危害を加えない」
"Eat this, and her magic will not work on you. When she touches you with her stick, pull out your sword. Make her promise to do you no harm."
意味: 「これを食べなさい。そうすれば魔法は効かない。杖で触れられたら、剣を抜きなさい。そして、あなたに危害を加えないと約束させるのだ」
途中でオデュッセウスの前に現れたのは、神々の使者ヘルメスでした。ヘルメスは、黒い根と白い花を持つ草を渡します。原作では「モーリュ(moly)」と呼ばれる不思議な草です。
do+人+harm は「人に害を与える」。do you no harm で「あなたに何の害も与えない」です。do は「する」だけでなく、「(人に何かを)与える、もたらす」という意味でも使います。do me a favor(お願いを聞く)、do you good(あなたのためになる)も同じ形です。
Eat this, and ... の and にも注目しましょう。命令文+and は「〜しなさい、そうすれば…」。命令文+or なら「〜しなさい、さもないと…」になります。
使い方の例:
- A little rest will do you good.(少し休めば元気になるよ)
- The dog won't do you any harm.(その犬はかみついたりしないよ)
- Hurry up, or you'll miss the bus.(急いで、でないとバスに乗り遅れるよ)
2. Everything happened as Hermes said. ―「すべてヘルメスの言ったとおりになった」
Everything happened as Hermes said. Circe gave Odysseus the drink, but nothing happened.
意味: すべてはヘルメスの言ったとおりになった。キルケーは飲み物を渡したが、何も起こらなかった
as は意味の多い言葉ですが、ここでは「〜のとおりに」。as Hermes said で「ヘルメスが言ったとおりに」です。Do as I say.(私の言うとおりにしなさい)もよく使う形です。
続く but nothing happened(だが、何も起こらなかった)は、Everything happened(すべてが起こった)と同じ動詞 happen を使った対比になっています。ヘルメスの予言は「すべて起こり」、キルケーの魔法は「何も起こらなかった」。
剣を向けられたキルケーは驚いてひざをつき、こう言います。"You must be Odysseus."(あなたはオデュッセウスにちがいない)。この must も、前々回に読んだ「〜にちがいない」の must です。
使い方の例:
- Do as I say.(私の言うとおりにしなさい)
- As you know, the meeting starts at ten.(ご存じのとおり、会議は10時に始まります)
- Everything went as planned.(すべて計画どおりに進んだ)
3. Have you forgotten Ithaca? ―「イタケーを忘れてしまったのですか」
Finally, the men came to Odysseus. "Have you forgotten Ithaca?" they asked.
意味: とうとう部下たちがオデュッセウスのところへやってきた。「イタケーのことを忘れてしまったのですか」と彼らはたずねた
約束を守ったキルケーは部下たちを人間の姿に戻し、一行をもてなします。おいしい食事、温かい風呂、やわらかい寝床。居心地がよすぎて、一行は丸1年もとどまってしまいました。
Have you forgotten ...? は現在完了です。「(今この時点で)忘れてしまっているのか」と、今の状態を問いかけています。Did you forget ...? なら「(あのとき)忘れたのか」という過去の一回の出来事になります。部下たちは「このまま故郷を忘れたままでいるつもりですか」と迫っているのです。
第1話で、蓮の実を食べて故郷を忘れた部下たちを船に引き戻したのは、オデュッセウス自身でした。今度は、その部下たちに故郷を思い出させてもらう側になっています。
使い方の例:
- Have you forgotten my name?(私の名前、忘れちゃったの?)
- I've lost my key.(鍵をなくしてしまった)※今も見つかっていない
- I lost my key yesterday, but I found it.(昨日鍵をなくしたけど、見つかった)※過去形
4. felt his heart break ―「胸が張り裂ける思いがした」
"You may go," Circe said. "But first you must make a long trip. You must go to the land of the dead and speak to the ghost of Tiresias, the blind prophet. Only he can tell you how to get home."
Odysseus felt his heart break.
意味: 「行ってもよい。だが、その前に長い旅をしなければならない。死者の国へ行き、盲目の預言者テイレシアスの霊と話すのだ。家に帰る道を教えられるのは、彼だけだ」とキルケーは言った。オデュッセウスは、胸が張り裂ける思いがした
feel+目的語+動詞の原形で「〜が…するのを感じる」。feel, see, hear などの感覚を表す動詞は、このように後ろに動詞の原形をとることができます。felt his heart break は、直訳すると「自分の心が壊れるのを感じた」。ここでの break は動詞ですが、名詞の heartbreak(悲嘆、胸が張り裂けるような悲しみ)と同じ発想の言い方です。
ここでの may は「〜してもよい」という許可、must は「〜しなければならない」という義務です。前回までに読んだ「〜にちがいない」の must とは意味が違うので、文脈で見分けましょう。
第2話は、No living man had ever gone to the land of the dead. But he had no choice.(生きたまま死者の国へ行った者は、それまで一人もいなかった。だが、ほかに道はなかった)という文で終わります。had no choice は「選択の余地がなかった」。次の第3話では、いよいよ死者の国と海の怪物たちが待っています。
使い方の例:
- I felt the ground shake.(地面が揺れるのを感じた)
- I heard someone call my name.(誰かが私の名前を呼ぶのが聞こえた)
- We had no choice but to wait.(待つしかなかった)
おわりに
これまでの記事:(1)風の袋 / (2)巨人の港と魔女の家
第3話「海の怪物たち」は、10月22日(木)に公開します。第1話の英語を読む記事は、こちらから読めます。