Blog · The Odyssey - Part 2: The Witch's Island
『オデュッセイア』第2話の英語を読む(1)風の袋
はじめに
名作ダイジェスト『オデュッセイア』の英語を読むシリーズ、第2話に入ります。第1話では、オデュッセウスが巨人キュクロプスの目をつぶして洞窟から逃げ出し、海の神ポセイドンの怒りを買うところまでを読みました。
第2話「魔女の島」では、風の神アイオロスの島から話が始まります。今回から3回に分けて、第2話の英語を物語の流れに沿って読んでいきます。1回目は、風の袋をめぐる場面です。
1. so close that they could see ―「〜が見えるほど近かった」
On the tenth day, they saw Ithaca. They were so close that they could see people making fires on the beach.
意味: 10日目に、イタケーが見えた。浜で火をたく人々の姿まで見えるほど近かった
風の神アイオロスは、強い風をすべて革の袋に閉じ込め、故郷へ向かうやさしい西風だけを外に残してくれました。9日9晩、オデュッセウスは眠らずに船を操り、ついに故郷の島が見えてきます。
so ... that ~ は「とても…なので~」、あるいは「~するほど…」。ここでは「浜の人が見えるほど近かった」と読むと、故郷がどれほど目の前だったかが伝わります。see people making fires は、see+人+動詞の ing 形で「人が~しているのが見える」という形です。
そして次の一文が、Then Odysseus, very tired, fell asleep.(そのとき、疲れ果てたオデュッセウスは眠ってしまった)。ここまで近づいたからこそ、このあとの出来事がいっそう悔しく感じられます。
使い方の例:
- The soup was so hot that I couldn't eat it.(スープが熱すぎて飲めなかった)
- She spoke so quietly that nobody heard her.(彼女の声は小さすぎて、誰にも聞こえなかった)
- I saw some children playing in the park.(公園で子どもたちが遊んでいるのが見えた)
2. keep it all for himself ―「全部ひとり占めする」
"Gold and silver, of course. Aeolus gave our captain a rich present, and he wants to keep it all for himself. We fought in the war too, and we are going home with empty hands."
意味: 「金と銀に決まってる。アイオロスは船長に豪華な贈り物をやったんだ。それを船長はひとり占めするつもりなのさ。おれたちだって戦ったのに、手ぶらで帰るんだぜ」
オデュッセウスが眠ったあと、部下たちは革の袋を見て、中身を勝手に想像します。keep ... for oneself は「〜を自分のものにしておく、ひとり占めする」。all が付いて「全部」を強めています。
of course は第1話で読んだ off course(針路を外れて)とは別の言葉で、「もちろん、決まっている」。部下たちは、確かめもせずに「金と銀に決まっている」と思い込んでいるのです。
部下たちの後半のせりふにある with empty hands は「手ぶらで、何も持たずに」。一語で empty-handed とも言います。
使い方の例:
- Don't keep all the snacks for yourself.(お菓子をひとり占めしないで)
- She kept the secret to herself.(彼女はその秘密を誰にも言わなかった)※ keep ... to oneself は「人に言わない」
- He came back empty-handed.(彼は手ぶらで帰ってきた)
3. At once, all the winds rushed out. ―「たちまち、風が一斉に吹き出した」
So they opened the bag.
At once, all the winds rushed out.
意味: そこで、彼らは袋を開けた。たちまち、すべての風が吹き出した
at once は「すぐに、たちまち」。immediately と同じ意味です。ただし at once には「同時に、一度に」という意味もあるので、文脈で見分けます(Don't all talk at once. みんな一度にしゃべらないで)。ここは袋を開けた「とたんに」です。
So they opened the bag.(そこで、彼らは袋を開けた)は、わずか5語で一つの段落になっています。長い不満のせりふのあとに置かれたこの短い一文が、取り返しのつかない瞬間を印象づけます。
rush out は「どっと飛び出す」。風は船を故郷から吹き戻し、アイオロスの島まで運んでしまいました。目を覚ましたオデュッセウスは、海に飛び込もうかと思うほど落ち込みます。
使い方の例:
- Come here at once!(今すぐこっちに来なさい!)
- The phone rang, and she answered it at once.(電話が鳴ると、彼女はすぐに出た)
- I can't do two things at once.(一度に二つのことはできない)※「同時に」の意味
4. a man the gods hate ―「神々に憎まれている男」
"Go away!" he shouted. "The gods must hate you. I will not help a man the gods hate."
意味: 「出ていけ!」と彼は叫んだ。「神々はおまえを憎んでいるにちがいない。神々に憎まれている男など、わしは助けない」
もう一度助けを求めたオデュッセウスに、アイオロスはこう言い放ちます。
a man the gods hate は、a man whom the gods hate の whom が省略された形です。関係代名詞が目的語になるときは、このように省略できます。「男、神々、憎む」と単語を順に追うと混乱しますが、a man のあとに「どんな男かというと」と説明が続いていると考えると読めます。
直前の must も読み違えやすいところです。must には「〜しなければならない」のほかに、「〜にちがいない」という推量の意味があります。The gods must hate you. は「神々はおまえを憎まなければならない」ではなく、「神々はおまえを憎んでいるにちがいない」です。
使い方の例:
- This is the book I told you about.(これが、前に話した本だ)
- The man she married is a doctor.(彼女が結婚した男性は医者だ)
- You must be tired after the long trip.(長旅のあとで、きっと疲れているでしょう)※推量の must
おわりに
次回は、人食い巨人の港と、魔女キルケーの家の場面の英語を読みます。LITIM では、本文の単語をタップすると意味を確かめながら読み進められます。今回の表現がどんな流れで出てくるのか、ぜひ本文で確かめてみてください。