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Blog · The Odyssey - Part 2: The Witch's Island

『オデュッセイア』第2話の英語を読む(2)巨人の港と魔女の家

2026.10.16

はじめに

名作ダイジェスト『オデュッセイア』第2話の英語を読むシリーズ、2回目です。前回は、部下たちが風の袋を開けてしまい、船が故郷の目前から吹き戻される場面を読みました。

風を失った一行は、船をこいで進むしかありません。やがてたどり着いたのは、高い崖に囲まれた港でした。今回は、人食い巨人の港から、魔女キルケーの家までの場面の英語を読みます。

1. Row for your lives! ―「死ぬ気でこげ!」

Odysseus cut the rope of his ship with his sword. "Row for your lives!" he shouted.

意味: オデュッセウスは剣で船の綱を切った。「命がけでこげ!」と彼は叫んだ

港に住んでいたのは、人を食べる巨人ライストリュゴネス族でした。巨人たちは崖の上から大岩を投げつけ、港の中の船を次々に砕いていきます。

for one's life は「命がけで、必死に」。「命のためにこげ」と訳すより、「死ぬ気でこげ」と読むほうが、この場面の切迫感に合います。run for your life(命がけで逃げろ)もよく使う形で、映画やゲームのせりふでもおなじみです。

オデュッセウスは最初から、自分の船だけを港の外の岩につないでいました。その用心深さが、この場面で一隻だけを救うことになります。

使い方の例:

  • Run for your life!(命がけで逃げろ!)
  • The climbers held on for dear life.(登山者たちは必死にしがみついた)※ for dear life も「必死に」
  • He swam for his life to reach the shore.(岸にたどり着こうと、彼は必死に泳いだ)

2. as hard as they could ―「力のかぎり」

His men rowed as hard as they could, and they escaped. But the other eleven ships were lost.

意味: 部下たちは力のかぎりこぎ、逃げ切った。けれども、ほかの11隻の船は失われた

as ... as one can は「できるだけ…」。as hard as they could で「できるかぎり激しく、力いっぱい」です。as ... as possible とも言い換えられます。

ここでの hard は、第1話で読んだ thought hard(必死に考えた)と同じ副詞で、「懸命に」という意味です。

But the other eleven ships were lost. Only one ship was left.(ほかの11隻は失われた。残ったのは1隻だけだった)。第1話で12隻そろって出航した船は、ここで1隻になってしまいます。短い二つの文が、失ったものの大きさを伝えています。

使い方の例:

  • I ran as fast as I could.(できるだけ速く走った)
  • Please reply as soon as possible.(できるだけ早くお返事ください)
  • She tried as hard as she could, but she couldn't open the jar.(彼女は力いっぱいやってみたが、瓶は開かなかった)

3. wagged their tails like dogs ―「犬のようにしっぽを振った」

Wolves and lions walked around it, but they did not attack. They wagged their tails like dogs.

意味: 家のまわりをオオカミやライオンが歩き回っていたが、襲ってはこなかった。犬のようにしっぽを振っていたのだ

次にたどり着いた島で、部下たちは森の中の石の家を見つけます。

wag は「(しっぽなどを)振る」。犬がしっぽを振る動きに使う動詞です。like dogs の like は「好き」ではなく、「〜のように」という前置詞です。

オオカミやライオンが犬のようにおとなしい。一見のどかな光景ですが、原作では、この獣たちは家の主である魔女キルケーの魔法で手なずけられていたと語られます(もとは人間だったと読む解釈もあります)。すぐあとで部下たちが豚に変えられることを思うと、この一文はさりげない警告になっています。

使い方の例:

  • The dog wagged its tail when I came home.(私が帰ると、犬はしっぽを振った)
  • She sings like a bird.(彼女は鳥のように歌う)
  • It looks like rain.(雨が降りそうだ)※ look like で「〜のようだ、〜しそうだ」

4. she had secretly mixed magic into it ―「こっそり魔法を混ぜてあった」

She gave the others a drink of cheese, honey, and wine. But she had secretly mixed magic into it.

意味: キルケーはほかの者たちに、チーズと蜂蜜とぶどう酒の飲み物を出した。だが、そこにはこっそり魔法が混ぜてあった

家に招き入れられた部下たちに、キルケーは飲み物を出します。ここで使われている had mixed は過去完了です。gave(出した)という過去の時点より前に、すでに魔法を混ぜ終えていた、という時間の順序を表しています。「出したとき、もう仕込み済みだった」と読むと、キルケーの計画がよくわかります。

そしてキルケーが魔法の杖で触れると、部下たちは豚に変わってしまいます。They had the heads, the bodies, and the voices of pigs, but inside, they still had human minds.(頭も体も声も豚になったが、心はまだ人間のままだった)。人間の心のまま豚にされるという、この物語でも特に恐ろしい場面です。

ただ一人、キルケーを信用しなかったエウリュロコスだけが、家の外に残っていました。

使い方の例:

  • When I got to the station, the train had already left.(駅に着いたとき、電車はもう出てしまっていた)
  • She had finished her homework before dinner.(彼女は夕食の前に宿題を終えていた)
  • He mixed sugar into his coffee.(彼はコーヒーに砂糖を混ぜた)

おわりに

次回は第2話の最終回です。神ヘルメスの助けを借りて、オデュッセウスがキルケーの魔法に立ち向かう場面を読みます。前回の記事はこちらから読めます。

『オデュッセイア』第2話を読む