Blog · The Odyssey - Part 1: The Giant's Cave
『オデュッセイア』第1話の英語を読む(1)故郷への船出
はじめに
『オデュッセイア』は、古代ギリシャの詩人ホメロスの作と伝えられる長い叙事詩です。トロイア戦争に勝った英雄オデュッセウスが、故郷の島イタケーに帰り着くまでの10年にわたる旅を描いています。LITIM の「名作ダイジェスト」では、この長い物語を、やさしい英語で全5話に書き直しました。
第1話「巨人の洞窟」は、中学・高校で習う単語が中心です。ただ、やさしい単語でできた表現ほど、意味を取り違えやすいものです。今回から3回に分けて、第1話の英語を物語の流れに沿って読んでいきます。1回目は、オデュッセウスたちが船出し、巨人の洞窟にたどり着くまでの場面です。
1. set sail ―「出航する」
Odysseus and his men set sail in twelve ships.
意味: オデュッセウスと部下たちは、12隻の船で出航した
sail は名詞で「帆」。set sail は「帆を張る」、つまり「出航する」という決まった言い方です。行き先を言うときは set sail for ...(〜に向けて出航する)とします。set は過去形も set なので、この文は過去の出来事を表しています。
his men は「彼の男たち」ではなく「彼の部下たち」。王や船長の部下を指すときによく使われる言い方で、この物語にも何度も出てきます。
set sail は、実際の船出だけでなく、新しいことを始めるときの比喩としても使われます。
使い方の例:
- The ship set sail at dawn.(船は夜明けに出航した)
- We set sail for the island the next morning.(翌朝、私たちはその島に向けて出航した)
- It's time to set sail on a new adventure.(新しい冒険に乗り出すときだ)
2. The trip home would take ten more years. ―「帰り道には、さらに10年かかることになる」
"In a few weeks," they said, "we will see our families again." They were wrong. The trip home would take ten more years.
意味: 「あと数週間で、また家族に会える」と彼らは言った。だが、それは間違いだった。帰り道には、さらに10年もかかることになるのだ
この would は「〜だろう」という推量ではありません。will の過去形として、「(その時点から見て)先に〜することになる」という未来を表しています。語り手はこの先の出来事を知っていて、それを前もって読者に明かしているのです。「かかるだろう」と訳すと、この確かな予告の響きが消えてしまいます。
直前の we will see our families again(また家族に会える)と、The trip home would take ten more years の対比にも注目しましょう。船の上の男たちの will は外れ、語り手の would は当たります。ten more years は「さらに10年」。戦争の10年と合わせて、オデュッセウスは20年も故郷を離れることになります。
使い方の例:
- I didn't know then that I would live in this city for twenty years.(そのときは、この街に20年も住むことになるとは思っていなかった)
- She met a young man who would later become her husband.(彼女はある青年と出会った。のちに彼女の夫になる人だった)
- It was the start of a friendship that would last a lifetime.(それが、一生続く友情の始まりだった)
3. far off their course ―「針路を大きく外れて」
For nine days, strong winds pushed the ships far off their course.
意味: 9日のあいだ、強い風が船を針路から大きく押し流した
course は「進路、針路」。off course で「針路を外れて」、on course で「針路どおりに、予定どおりに」という意味になります。of course(もちろん)とは f が一つ違うだけなので、読み飛ばさないように注意しましょう。
off course は、計画が予定からそれるときの比喩としても使われます。
流された先は、蓮の実を食べる人々(the Lotus-Eaters)の国でした。その実を食べた者は、故郷も家族も忘れてしまいます。英語の lotus-eater は、今でも「故郷や仕事を忘れて、のんきに暮らす人」という意味で使われることがあります。
使い方の例:
- The plane was blown off course by the storm.(嵐のため、飛行機は針路を外れた)
- We went off course and ended up in the wrong town.(道をそれて、違う町に着いてしまった)
- The project is back on course.(プロジェクトは予定どおりの軌道に戻った)
4. on our way home ―「帰る途中の」
"We are Greeks, on our way home from Troy," said Odysseus.
意味: 「私たちはギリシャ人で、トロイアから故郷へ帰る途中なのです」とオデュッセウスは言った
on one's way home は「家に帰る途中で」。この home は「家へ」という意味の副詞なので、to は付けません。go home と同じです。行き先が home 以外なら、on one's way to school(学校へ行く途中で)のように to を使います。
"I'm on my way." は日常会話でもよく使う言い方で、「今そちらに向かっています」という意味です。
オデュッセウスはこのあと、"The gods want us to treat guests well."(神々は、客をもてなすよう私たちに命じている)と続けます。ところが、洞窟の主はその言葉を笑い飛ばします。この続きは、次回に読みましょう。
使い方の例:
- I bought some milk on my way home.(帰り道に牛乳を買った)
- I met Ken on my way to school.(学校へ行く途中でケンに会った)
- Don't worry, I'm on my way!(心配しないで、今向かっているから)
おわりに
次回は、一つ目の巨人の洞窟に閉じ込められた場面の英語を読みます。LITIM では、本文の単語をタップすると意味を確かめながら読み進められます。今回の表現がどんな流れで出てくるのか、ぜひ本文で確かめてみてください。