Blog · The Tale of Benjamin Bunny
『ベンジャミン・バニーのおはなし』の英語を読む(3)猫とお父さん
はじめに
『ベンジャミン・バニーのおはなし』の英語を読むシリーズ、最終回です。前回は、マクレガーさんの畑の中で、びくびくするピーターと、すっかりくつろぐベンジャミンの様子を読みました。
玉ねぎを抱えて畑の奥へ進んだふたりは、角を曲がったところで思いもよらない相手に出くわします。今回は、そこから物語の結末までの英語を読みます。
1. in half a minute less than no time ―「あっという間に」
Little Benjamin took one look, and then, in half a minute less than no time, he hid himself and Peter and the onions underneath a large basket....
意味: ベンジャミンはひと目見るなり、あっという間に、自分とピーターと玉ねぎを大きなかごの下に隠した
角の向こうにいたのは、一匹の猫でした。in no time は「すぐに、あっという間に」という決まった言い方です。直訳すると「時間ゼロで」。
ポターはそれをさらに大げさにして、in half a minute less than no time(時間ゼロよりもさらに30秒短く)と書いています。ありえない時間の言い方で、ベンジャミンの素早さを笑いに変えているのです。英語でも冗談として通じる言い方で、たとえば in less than no time(あっという間に)は今でも使われます。
ところが猫はかごのにおいを嗅ぎ、その上に座り込んでしまいます。そして、She sat there for five hours.(猫は5時間そこに座っていた)。短い一文に、かごの中のふたりの長い長い時間が詰まっています。
使い方の例:
- The kids finished their dinner in no time.(子どもたちはあっという間に夕食を平らげた)
- I'll be back in no time.(すぐに戻るよ)
- The tickets sold out in less than no time.(チケットはあっという間に売り切れた)
2. had no opinion whatever of cats ―「猫などまるで相手にしていなかった」
Old Mr. Bunny had no opinion whatever of cats.
意味: ベンジャミンのお父さんは、猫のことなどまるで評価していなかった
夕方近く、壁の上をお父さんのベンジャミン・バニー老人が跳ねてきます。パイプをくわえ、手には小枝のむち。息子を探しに来たのです。
have no opinion of ... を「〜について意見がない」と読むと、意味を取り違えます。ここでの opinion は「評価、よい考え」。have a high opinion of ...(〜を高く評価する)、have a low opinion of ...(〜を低く見る)と同じ仲間で、have no opinion of ... は「〜をまるで評価しない、ばかにしている」という意味です。名詞のあとの whatever は「少しも」と否定を強めています。
その言葉どおり、お父さんは壁から猫の上に飛び降り、猫をかごから叩き落として温室に蹴り込み、鍵をかけてしまいました。
使い方の例:
- She has a high opinion of her new boss.(彼女は新しい上司を高く評価している)
- He has a low opinion of politicians.(彼は政治家を低く見ている)
- I have no interest whatever in sports.(私はスポーツにまったく興味がない)
3. was too much surprised to scratch back ―「驚きのあまり引っかき返せなかった」
The cat was too much surprised to scratch back.
意味: 猫はあまりに驚いて、引っかき返すこともできなかった
too ... to+動詞の原形は「あまりに〜なので…できない」。中学で習う形ですが、「…するには〜すぎる」と訳すより、「〜すぎて…できない」と読むほうが自然です。
too much surprised の much は、今ならふつう付けません(too surprised)。昔は過去分詞の前に much を置く言い方がよく使われました。scratch back の back は「やり返して」。hit back(殴り返す)、fight back(反撃する)と同じ使い方です。
さっきまで5時間もかごの上に居座っていた猫が、あっけなくやられてしまう。お父さんの強さが、この一文でよくわかります。そのあと、お父さんは息子ベンジャミンの耳をつかんでかごから出し、小枝のむちで叩きました。畑に勝手に来たことへのお仕置きです。
使い方の例:
- I was too tired to walk any further.(疲れすぎて、それ以上歩けなかった)
- The box was too heavy for me to lift.(その箱は重すぎて、私には持ち上げられなかった)
- If someone hits you, don't hit back.(誰かに叩かれても、やり返してはいけない)
4. It looked as though ... only ―「まるで〜のようだった。ただし」
It looked as though some person had been walking all over the garden in a pair of clogs—only the footmarks were too ridiculously little!
意味: まるで誰かが木靴をはいて、畑じゅうを歩き回ったかのようだった。ただ、その足跡はばかばかしいほど小さかった
30分ほどして帰ってきたマクレガーさんは、首をひねります。as though は「まるで〜のように」で、as if と同じ意味です。後ろの had been walking は過去完了進行形で、「(帰ってくる前に)歩き回っていた」という前の時間を表します。
ここで読み違えやすいのは、ダッシュのあとの only です。この only は「〜だけ」ではなく、「ただし、でも」という意味の接続詞で、話し言葉でよく使います。「足跡だけが小さかった」ではなく、「ただ、足跡があまりに小さかった」と読みます。木靴をはいていたのは、もちろんベンジャミンです。
マクレガーさんの謎はもう一つありました。猫がどうやって、外から鍵をかけて温室に閉じこもったのか、どうしてもわからなかったのです。
使い方の例:
- He looked as though he had seen a ghost.(彼はまるで幽霊でも見たような顔をしていた)
- I'd love to come, only I'm busy that day.(行きたいんだけど、その日は忙しくて)
- It's a nice car, only it's too expensive.(いい車だけど、ただ高すぎる)
おわりに
物語の最後、家に帰ったピーターをお母さんは許してくれます。because she was so glad to see that he had found his shoes and coat(上着と靴が見つかったのが、とてもうれしかったから)。玉ねぎは、ハーブやうさぎたばこと一緒に台所の天井につるされました。
3回にわたって読んできた表現を思い出しながら、ぜひ最初から最後まで通して読んでみてください。
これまでの記事:(1)いとこを訪ねて / (2)畑の中のふたり
次回からは、10月15日に公開する名作ダイジェスト『オデュッセイア』第2話の英語を読みます。