← ブログ一覧へ

Blog · The Odyssey - Part 3: The Monsters of the Sea

『オデュッセイア』第3話の英語を読む(2)セイレーンの歌

2026.10.23

『The Odyssey - Part 3: The Monsters of the Sea』を読む → 無料・登録不要|単語をタップすると意味が出ます

はじめに

名作ダイジェスト『オデュッセイア』第3話の英語を読むシリーズ、2回目です。前回は、死者の国で預言者テイレシアスの予言を聞き、亡くなった母の霊と再会する場面を読みました。

キルケーの島に戻った一行に、女神はこの先の航海の危険を教えます。今回は、美しい歌で船乗りを破滅に誘う怪物セイレーンの場面の英語を読みます。

1. Around the Sirens lie the bones of many men. ―「セイレーンのまわりには、多くの男たちの骨が横たわっている」

"They sing so beautifully that sailors forget everything and sail toward them. Around the Sirens lie the bones of many men."

意味: 「彼女たちの歌はあまりに美しいので、船乗りたちは何もかも忘れて、そちらへ船を向けてしまう。セイレーンのまわりには、多くの男たちの骨が横たわっている」

前半の so beautifully that ... は、第2話で読んだ so ... that ~(とても…なので~)の形です。

後半の文は、主語と動詞の順番が入れ替わっています。ふつうの語順なら The bones of many men lie around the Sirens. です。場所を表す Around the Sirens を文の頭に出し、主語の the bones of many men を最後に置くことで、聞き手は「セイレーンのまわりに……何がある?」と身構え、最後に「骨」を突きつけられます。このように場所を前に出す倒置は、物語や詩でよく使われます。

lie はここでは「うそをつく」ではなく、「横たわる、ある」。主語が複数の bones なので、lies ではなく lie になっています。

使い方の例:

  • On the hill stands an old castle.(丘の上に古い城が建っている)
  • In the box was a small key.(箱の中には小さな鍵が入っていた)
  • The book lay on the table.(その本はテーブルの上にあった)※lie の過去形は lay

2. so that they cannot hear ―「聞こえないように」

"Put wax in your men's ears so that they cannot hear. If you want to hear the song yourself, tell them to tie you to the mast."

意味: 「部下たちの耳に蝋(ろう)を詰めて、聞こえないようにしなさい。おまえ自身が歌を聞きたいなら、自分を帆柱に縛りつけるよう部下に命じなさい」

so that +主語+can / cannot ... は「〜できるように」「〜できないように」と、目的を表します。前の項目の so ... that ~(とても…なので~)とよく似ていますが、so と that がくっついて並んでいるときは「目的」、間に形容詞や副詞が入っているときは「程度・結果」と見分けられます。

tell +人+ to 動詞は「人に〜するように言う」。tell them to tie you で「あなたを縛るよう彼らに言う」です。

yourself は「おまえ自身で」。部下たちには聞かせないが、自分だけは歌を聞いてみたい。キルケーは、オデュッセウスの好奇心の強さを見抜いているかのようです。

使い方の例:

  • I wrote it down so that I wouldn't forget.(忘れないように書き留めた)
  • Speak louder so that everyone can hear you.(みんなに聞こえるように、もっと大きな声で話して)
  • My mother told me to clean my room.(母は私に部屋を片付けるように言った)

3. more beautiful than anything Odysseus had ever heard ―「それまでに聞いたどんなものよりも美しい」

The song was more beautiful than anything Odysseus had ever heard. He wanted to go to them more than anything.

意味: その歌は、オデュッセウスがそれまでに聞いたどんなものよりも美しかった。彼は何よりも、彼女たちのもとへ行きたいと思った

比較級+ than anything は「何よりも〜」。いちばん美しい、と最上級で言うのと同じ意味になります。

anything Odysseus had ever heard は、anything のあとに that が省略されていて、「オデュッセウスがそれまでに聞いたことのある、どんなもの」。had ever heard は過去完了の「経験」で、「その時点までに一度でも聞いたことがある」という意味です。

セイレーンは直前で、We know everything that happened at Troy. We know everything in the world.(トロイアで起きたことはすべて知っている。この世のすべてを知っている)と歌っていました。歌の美しさだけでなく、「すべてを知りたい」という気持ちに訴えかける誘惑です。

続く He wanted to go to them more than anything. では、同じ more than anything が「何よりも」と、行きたい気持ちの強さを表しています。一文目は歌の美しさ、二文目はオデュッセウスの欲望と、同じ形を重ねて誘惑の強さを伝えています。

使い方の例:

  • This cake is better than anything I've ever eaten.(このケーキは今まで食べたどんなものよりおいしい)
  • I love my children more than anything.(何よりも子どもたちを愛している)
  • It was the best movie I had ever seen.(それまでに見た中でいちばんの映画だった)

4. tied him even more tightly ―「さらにきつく縛った」

He shouted to his men to untie him, but they could not hear him. Instead, two of them stood up and tied him even more tightly. The ship rowed on, and the song grew quiet behind them.

意味: 彼は部下たちに縄をほどけと叫んだが、彼らには聞こえなかった。そのかわりに、二人が立ち上がって、彼をさらにきつく縛った。船はこぎ進み、歌声は後ろで小さくなっていった

untie は tie(縛る)に un- が付いて「ほどく」。un- は反対の動作を表します(lock → unlock、pack → unpack)。

even more tightly の even は「さらに、いっそう」。比較級の前に置いて、差を強めます。もともときつく縛ってあったところを、「さらに」きつく縛ったのです。耳を蝋でふさいだ部下たちには、歌もオデュッセウスの叫び声も聞こえていません。それでも、もがく船長の姿を見て、歌に誘われているのだと分かったのでしょう。

rowed on の on は「(止まらずに)続けて」という意味です。row は「船をこぐ」。go on(続ける)、read on(読み続ける)と同じ on です。

grew quiet の grow は「育つ」ではなく、「(だんだん)〜になる」。歌声が遠ざかっていく様子が、grew の一語で表されています。

使い方の例:

  • Can you untie this knot?(この結び目をほどいてくれる?)
  • Today is even colder than yesterday.(今日は昨日よりもさらに寒い)
  • Please read on.(どうぞ続きを読んでください)
  • It grew dark outside.(外はだんだん暗くなった)

おわりに

次回は第3話の最終回です。六つの首を持つ怪物スキュラと、太陽神の牛をめぐる場面の英語を読みます。前回の記事はこちらから読めます。

『オデュッセイア』第3話を読む

『The Odyssey - Part 3: The Monsters of the Sea』を読む

無料・登録不要|単語をタップすると意味が出ます