Blog · Rumpelstiltskin
『ルンペルシュティルツキン』の英語を読む(1)粉屋の自慢
はじめに
『ルンペルシュティルツキン』(Rumpelstiltskin)は、グリム兄弟が集めたドイツの昔話です。LITIM で読めるのは、『カエルの王さま』と同じ、1823年のエドガー・テイラーによる英訳です。粉屋の自慢話から始まり、わらを金に変える小人、そして名前当ての駆け引きへと話が進みます。
200年前の英訳なので、Good morrow のような古い挨拶や、今ではあまり使わない言い回しが出てきます。今週は3回に分けて、物語の流れに沿って表現を読んでいきます。1回目は、粉屋の娘が王様のお城に閉じ込められるまでの場面です。
1. you must know ―「実はね」
The miller’s house was close by, and the miller, you must know, had a very beautiful daughter.
意味: 粉屋の家はすぐそばにあった。そしてその粉屋には、実はとても美しい娘がいたのだ
you must know を「あなたは知らなければならない」と読むと、文の流れが止まってしまいます。ここでは語り手が読者に向かって「実はね」「言っておくとね」と話しかける合いの手です。文の途中にコンマではさんで入れるのが特徴で、昔話の語り口らしい言い方です。
このすぐあとの文にある was so proud of her, that ...(娘がとても自慢で、〜した)は so ... that の形です。that の前にコンマが入っているのは古い書き方で、意味は変わりません。
使い方の例:
- The old man, you must know, had once been a famous singer.(その老人は、実はかつて有名な歌手だったのだ)※物語の語り口
- She was so tired that she fell asleep at once.(彼女はとても疲れていたので、すぐに眠ってしまった)
- He is very proud of his son.(彼は息子がとても自慢だ)
2. sent for the girl ―「娘を呼びにやった」
Now this king was very fond of money; and when he heard the miller’s boast his greediness was raised, and he sent for the girl to be brought before him.
意味: さて、この王様は大のお金好きだった。粉屋の自慢を聞いて欲が出た王様は、娘を自分の前に連れてくるよう人をやった
send for ... は「〜を呼びにやる、〜を呼び寄せる」。王様が自分で迎えに行くのではなく、家来を使いに出して来させる、という意味です。今でも send for a doctor(医者を呼ぶ)のように使います。
同じ文の be fond of ... は「〜が大好きだ」。fond of money で「お金が大好き」、つまり欲が深い王様だということです。boast は「自慢、ほら話」。ここで粉屋の自慢話を聞いた王様の欲(greediness)に、火がついてしまいます。
使い方の例:
- We sent for a doctor at once.(私たちはすぐに医者を呼びにやった)
- The teacher sent for his parents.(先生は彼の両親を呼び出した)
- My grandmother is very fond of cats.(祖母は猫が大好きだ)
3. as you love your life ―「命が惜しければ」
‘All this must be spun into gold before morning, as you love your life.’
意味: 「朝までにこれを全部、金に紡ぐのだ。命が惜しければな」
王様のおどしの言葉です。as you love your life は、直訳すると「あなたが自分の命を愛しているように」。そこから「命が惜しいなら(やりとげろ)」という、強い命令やおどしの意味になります。今ではほとんど使わない古い言い方です。
must be spun は「紡がれなければならない」という受け身です。spun は spin(紡ぐ、回す)の過去分詞で、spin - spun - spun と変化します。この物語のキーワードなので、ぜひ覚えておいてください。
使い方の例:
- The wheel spun faster and faster.(車輪はどんどん速く回った)
- The thread was spun from wool.(その糸は羊毛から紡がれた)
- This work must be finished by Friday.(この仕事は金曜日までに終えなければならない)
4. It was in vain that ... ―「〜したが、無駄だった」
It was in vain that the poor maiden said that it was only a silly boast of her father, for that she could do no such thing as spin straw into gold: the chamber door was locked, and she was left alone.
意味: 気の毒な娘は、あれは父のばかげたほら話にすぎず、わらを金に紡ぐなんてとてもできない、と言ったが、無駄だった。部屋の扉には鍵がかけられ、娘はひとり残された
in vain は「無駄に、むなしく」。It was in vain that ... の形で、「〜したけれども無駄だった」という意味になります。娘がいくら説明しても、王様は聞き入れなかったということです。
for that she could do ... の for that は、少し古い書き方で「なぜなら」という意味です。今なら because を使います。do no such thing as ... は「〜のようなことは何もできない」。maiden は「娘、乙女」の古い言い方です。
使い方の例:
- We tried to stop him, but it was in vain.(私たちは彼を止めようとしたが、無駄だった)
- She waited for him in vain.(彼女は彼を待ったが、来なかった)
- I said no such thing.(そんなことは言っていない)
おわりに
次回は、泣いている娘の前に不思議な小人が現れ、わらを金に変えていく場面の英語を読みます。同じテイラー訳の『カエルの王さま』の英語表現は、こちらの記事で紹介しています。今回の表現がどんな流れで出てくるのか、ぜひ本文で確かめてみてください。