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Blog · The Selfish Giant

『わがままな大男』の英語を読む(2)春が来ない庭

2026.10.06

はじめに

『わがままな大男』の英語を読むシリーズ、2回目です。前回は、大男が庭に高い塀を建て、子どもたちが遊び場を失うところまでを読みました。

今回はその続き、春が来なくなった庭の場面です。ここでは雪や霜、北風やあられが、まるで人のように話し、動きまわります。季節が主役になる、この物語でいちばん絵になる場面の英語を見ていきましょう。

1. her great white cloak ―「雪」は女性、「北風」は男性

The Snow covered up the grass with her great white cloak, and the Frost painted all the trees silver.

意味: 雪は大きな白いマントで芝生を覆い、霜は木々をすべて銀色に塗った

この場面では、Snow、Frost、North Wind、Hail、Spring、Autumn がすべて大文字で始まっています。ふつうの名詞ではなく、名前を持った登場人物として扱われている合図です。

さらに注目したいのは代名詞です。英語では雪や風は本来 it で受けますが、ここでは雪は her(彼女の)、北風は he(彼)で受けています。北風は毛皮にくるまって一日じゅう庭で吠え、あられは灰色の服を着て、氷のような息を吐きます。秋も she です。代名詞を it から he や she に変えるだけで、自然がいきいきとした人物になるのです。

painted all the trees silver は paint+目的語+色で「〜を…色に塗る」。霜が降りて白く光る木々を、霜が絵筆で塗ったように描いています。

英語には今も、季節や天気を人にたとえる言い方がいくつか残っています。

使い方の例:

  • Jack Frost visited last night.(ゆうべは霜が降りた)※霜を「ジャック・フロスト」という人物にたとえる言い方
  • Old Man Winter arrived early this year.(今年は冬将軍の到来が早かった)※主にアメリカ英語
  • Mother Nature knows best.(自然のことは自然にまかせるのがいちばんだ)

2. ask the Hail on a visit ―「あられも招待しよう」

"This is a delightful spot," he said, "we must ask the Hail on a visit."

意味: 「ここはすてきな所だ。あられも招いてやらなくては」と北風は言った

ここでの ask は「たずねる」ではなく「招く」です。ask ... on a visit は「〜を訪ねてくるよう招く」という、少し古い言い方です。今なら ask ... over や、イギリス英語の ask ... round、あるいは単に invite を使います。

北風にとって、塀に囲まれた凍えた庭は delightful spot(すてきな場所)。子どもたちにとってはもう近づけない場所が、冬の仲間たちにとっては居心地のよい別荘になっています。招かれたあられは、毎日3時間、城の屋根を打ち鳴らしてスレート瓦をほとんど割ってしまいます。

使い方の例:

  • Let's ask the neighbors over for dinner.(お隣さんを夕食に招こう)
  • She asked me round for tea.(彼女がお茶に呼んでくれた)※イギリス英語
  • He asked her to the dance.(彼は彼女をダンスパーティーに誘った)

3. all the year round ―「一年じゅう」

"Spring has forgotten this garden," they cried, "so we will live here all the year round."

意味: 「春はこの庭のことを忘れてしまった。だから、私たちは一年じゅうここに住もう」と、雪と霜は声をあげた

all the year round は「一年を通して、一年じゅう」。round は「ひと回り」の意味で、一年をぐるりと一周するイメージです。今は the を省いて all year round と言うのがふつうです。

Spring has forgotten this garden の現在完了にも注目しましょう。「春は忘れてしまった(そして今も忘れたままだ)」という意味で、状態が今も続いていることを表しています。

このあと、大男は窓から真っ白な庭を眺めて、"I hope there will be a change in the weather."(天気が変わるといいのだが)とつぶやきます。春が来ないのは天気のせいだと思っているのです。理由に気づいていないのは、大男だけです。

使い方の例:

  • This shop is open all year round.(この店は一年じゅう営業している)
  • You can see snow on the mountain all year round.(その山では一年じゅう雪が見られる)
  • The pool is heated, so you can swim in it all year round.(プールは温水なので、一年じゅう泳げる)

4. nor the Summer ―「夏も来なかった」

But the Spring never came, nor the Summer. The Autumn gave golden fruit to every garden, but to the Giant's garden she gave none.

意味: けれども春は来なかったし、夏も来なかった。秋はどの庭にも黄金色の果実を実らせたが、大男の庭には一つも与えなかった

nor は、否定の文のあとで「〜もまた…ない」と付け加える言葉です。nor the Summer は、and the Summer never came either(夏もまた来なかった)を短くした形です。nor の後ろに主語と動詞が続くときは、nor did he ... のように疑問文と同じ語順(倒置)になります。

続く to the Giant's garden she gave none も読みどころです。ふつうの語順なら she gave none to the Giant's garden ですが、to the Giant's garden を前に出すことで、「ほかの庭には与えたが、大男の庭には」という対比が際立ちます。none は「一つも〜ない」。秋はその理由を、"He is too selfish,"(あの人はわがまますぎるもの)と一言で片付けます。

使い方の例:

  • She can't swim, nor can I.(彼女は泳げないし、私も泳げない)
  • He didn't call, nor did he send a message.(彼は電話もしてこなかったし、メッセージも送ってこなかった)
  • I have never been to Paris, nor has my sister.(私はパリに行ったことがないし、姉もない)

おわりに

次回はいよいよ最終回です。凍りついた庭に春が戻る場面と、聖書のような古い英語が突然あらわれる結末を読みます。前回の記事はこちらから読めます。今回の表現が物語のどんな流れで出てくるのか、ぜひ本文で確かめてみてください。

『わがままな大男』を読む