Blog · The Odyssey - Part 1: The Giant's Cave
『オデュッセイア』第1話の英語を読む(2)巨人の洞窟で
はじめに
名作ダイジェスト『オデュッセイア』第1話の英語を読むシリーズ、2回目です。前回は、オデュッセウスたちが船出し、嵐に流され、海辺の大きな洞窟にたどり着くまでを読みました。
洞窟の主が留守のあいだ、部下たちは早く立ち去ろうと言いますが、オデュッセウスは主に会うまで待つことにします。古代ギリシャでは、旅人をもてなし、贈り物を渡すのが神々の定めた決まりでした。神々の王ゼウスは、旅人や客人を守る神とされていたのです。ところが、帰ってきた洞窟の主は、その決まりを守る相手ではありませんでした。
1. Even twenty wagons could not move that rock. ―「荷車20台でも動かせない」
Then he picked up a huge rock and put it across the door. Even twenty wagons could not move that rock.
意味: それから巨人は大きな岩を持ち上げ、入り口をふさいだ。その岩は、荷車20台がかりでも動かせないほどだった
帰ってきたのは、額の真ん中に目が一つだけある巨人キュクロプスでした。even は「〜でさえ」という意味で、強めたい言葉のすぐ前に置きます。ここでは twenty wagons を強めて、「20台もの荷車でさえ動かせない」と、岩の途方もない重さを伝えています。
巨人の大きさは as tall as a tree(木ほどの背丈)とも描かれています。as ... as で「〜と同じくらい…」。やさしい表現ですが、この even の一文によって、オデュッセウスたちが完全に閉じ込められたことがはっきりします。この岩が、あとで物語の大事な鍵になります。
使い方の例:
- Even a child can do it.(子どもでさえできる)
- Even my mother didn't know about it.(母でさえ、そのことを知らなかった)
- It's cold here even in summer.(ここは夏でさえ寒い)
2. I do not care about the gods ―「神々など知ったことか」
The Cyclops laughed. "I do not care about the gods," he said.
意味: キュクロプスは笑った。「神々のことなど、どうでもいい」と彼は言った
care about ... は「〜を気にかける、大切に思う」。否定の not care about ... になると、「〜のことはどうでもいい」という強い突き放しになります。
オデュッセウスは前回読んだとおり、「神々は、客をもてなすよう命じている」と訴えていました。巨人の答えは、その掟そのものを笑い飛ばすものです。古代ギリシャの聞き手にとって、これは乱暴なだけでなく、神々を恐れない恐ろしい言葉でした。
似た形の care for ... は「〜の世話をする」「〜を好む」という意味になるので、区別して覚えておきましょう。
使い方の例:
- She really cares about the environment.(彼女は環境のことを本当に大切に考えている)
- I don't care about money.(お金のことはどうでもいい)
- Who cares?(誰が気にするもんか/どうでもいいよ)
3. If the Cyclops died, who would move the rock? ―「巨人が死んだら、誰が岩を動かすのか」
Odysseus took out his sword. He wanted to kill the giant right away. But then he stopped. If the Cyclops died, who would move the rock?
意味: オデュッセウスは剣を抜いた。すぐにでも巨人を殺したかった。だが、そこで手を止めた。もし巨人が死んだら、誰があの岩を動かすのか
right away は「すぐに」。剣を抜いたオデュッセウスは、次の瞬間に手を止めます。その理由が、If the Cyclops died, who would move the rock? という問いです。
これはオデュッセウスが頭の中で考えたことを、物語の過去形に合わせて書いたものです。彼自身の言葉にすると、"If the Cyclops dies, who will move the rock?"(巨人が死んだら、誰が岩を動かすんだ)となります。形は、学校で習う「If+過去形, would+動詞の原形」(もし〜なら…するだろう)と同じなので、そのまま「もし〜したら、…するだろうか」と読んで大丈夫です。
答えは、誰にも動かせない、です。巨人を殺せば、自分たちも洞窟から出られずに死ぬ。力では勝てても意味がない。この一文で、物語は「力の話」から「知恵の話」に変わります。
使い方の例:
- If I won the lottery, I would travel around the world.(もし宝くじが当たったら、世界一周の旅に出るだろう)
- If you left now, you would catch the last train.(今出れば、終電に間に合うだろう)
- If the bridge fell, how would we get home?(もし橋が落ちたら、どうやって家に帰ればいいのだろう)
4. thought hard ―「必死に考えた」
All day, Odysseus thought hard.
意味: その日一日じゅう、オデュッセウスは必死に考えた
hard は形容詞「かたい、難しい」でおなじみですが、ここでは動詞のあとに置かれた副詞で、「一生懸命に、懸命に」という意味です。think hard で「真剣に考える、知恵をしぼる」。
気をつけたいのは、hard に ly を付けた hardly です。hardly は「ほとんど〜ない」という否定の意味になり、「一生懸命に」とはまったく逆になります。thought hardly なら「ほとんど考えなかった」です。
一日じゅう考えたオデュッセウスは、洞窟の中でオリーブの木でできた長い棒を見つけ、その先を鋭くとがらせて、わらの下に隠しました。
使い方の例:
- She studied hard for the test.(彼女はテストに向けて一生懸命勉強した)
- He hardly studied for the test.(彼はテスト勉強をほとんどしなかった)
- It rained hard all night.(一晩じゅう激しく雨が降った)
おわりに
次回は第1話の最終回です。オデュッセウスが巨人に名乗った「名前」のトリックと、洞窟からの脱出、そして旅の行方を決める呪いの場面を読みます。前回の記事はこちらから読めます。