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Blog · The Open Window

『開いた窓』で読み違えやすい英語表現5選

2026.09.28

はじめに

サキの『開いた窓』(1914年)は、神経の療養のために田舎へやって来た青年フラムトン・ナトルが、訪問先の家で15歳の少女ヴェラから、ある悲しい話を聞かされる物語です。わずか千語あまりの短編ですが、最後の一行で物語の見え方ががらりと変わります。サキの英語は皮肉がきいていて、何気ない言い回しにも仕掛けがあります。

今回は物語の流れに沿って、読み違えやすい表現を5つ取り上げます。

1. put up with ―「我慢する」

"My aunt will be down presently, Mr. Nuttel," said a very self-possessed young lady of fifteen; "in the meantime you must try and put up with me."

意味: 叔母はまもなく下りてまいります。それまでは、私でご辛抱くださいね

put up with ... は「(いやなことを)我慢する、耐える」という意味の句動詞です。tolerate や stand とほぼ同じ意味ですが、会話でよく使われます。ここでは「私のような子どもがお相手で申し訳ありませんが」と、へりくだった大人びた言い方になっています。

self-possessed(落ち着き払った)と紹介される少女ヴェラの、最初の台詞です。15歳にしては堂々としすぎているこの少女が、物語の主役です。読み終えてからこの一文に戻ると、「私に付き合ってもらいます」という別の響きが聞こえてきます。

使い方の例:

  • I can't put up with this noise any longer.(もうこの騒音には我慢できない)
  • She puts up with a lot from her boss.(彼女は上司の言動に、ずいぶん耐えている)
  • Thank you for putting up with me all week.(1週間、私に付き合ってくれてありがとう)

2. got on her nerves ―「神経に障った」

"...and Ronnie, her youngest brother, singing 'Bertie, why do you bound?' as he always did to tease her, because she said it got on her nerves."

意味: 末の弟のロニーは、叔母をからかおうと、いつものように「バーティ、なぜ跳ねる」を歌っていたの。叔母がその歌をいやがっていたから

get on one's nerves は「〜をいらいらさせる」「〜の神経に障る」という決まった言い方です。nerves(神経)に何かが乗ってくる感覚で、主語には「いらいらの原因」が来ます。

ヴェラによると、3年前のちょうど今日、叔母の夫と二人の弟が猟に出たまま沼に沈み、遺体も見つからなかった。叔母はいつか彼らが帰ってくると信じて、夕暮れまで窓を開けているのだといいます。白いレインコート、弟が歌っていたからかいの歌。細かな思い出話が、この話をいかにも本当らしく見せています。

使い方の例:

  • His constant complaining really gets on my nerves.(彼の愚痴ばかりの話には、本当にいらいらする)
  • That song is starting to get on my nerves.(あの歌、だんだん耳障りになってきた)
  • Sorry, I didn't mean to get on your nerves.(ごめん、いらいらさせるつもりはなかったんだ)

3. laboured under the delusion ―「思い違いをしていた」

...announced Framton, who laboured under the tolerably widespread delusion that total strangers and chance acquaintances are hungry for the least detail of one's ailments and infirmities, their cause and cure.

意味: フラムトンは、見知らぬ人やたまたま知り合った人も、他人の病気のことなら細かいことまで聞きたがるものだという、かなり広く見られる思い違いをしていた

labour under a delusion は「思い違いをしている」「勘違いしたまま過ごしている」という改まった言い方です。labour under は「(重荷や誤解などを)抱えて苦しむ」。delusion は「思い込み、妄想」です。

叔母のサップルトン夫人が現れても、フラムトンはヴェラの話が頭から離れません。気まずさを紛らわすように、自分の病気と医者の指示について延々と語り出します。語り手はこの場面で、「病気の話を喜んで聞く人などいない」と皮肉たっぷりに突き放しています。

使い方の例:

  • He is labouring under the delusion that everyone likes him.(彼は、みんなに好かれていると思い込んでいる)
  • If you think this will be easy, you're labouring under a delusion.(これが簡単だと思っているなら、それは思い違いだ)
  • She was under the impression that the meeting was on Friday.(彼女は、会議は金曜日だと思い込んでいた)※似た言い方の be under the impression

4. had seen a ghost ―「幽霊でも見たかのよう」

"...and dashed off without a word of good-bye or apology when you arrived. One would think he had seen a ghost."

意味: あなたたちが帰ってきたとたん、さよならも言わずに飛び出していったのよ。まるで幽霊でも見たみたいに

look as if one had seen a ghost は、ひどく驚いたり青ざめたりしている人を「幽霊でも見たような顔」とたとえる決まった言い方です。One would think ... は「〜かと思うほどだ」。

叔母の目が窓の外に向いたとき、夕闇の中を三人の男と一匹のスパニエルが歩いてきます。ヴェラから「沼で死んだ」と聞かされていた人たちです。フラムトンは、杖も帽子もつかんで一目散に逃げ出します。叔母にとっては、夫たちが猟から戻っただけ。フラムトンにとっては、本当に幽霊を見たのと同じでした。この台詞は、何も知らない叔母の口から出るからこそ、たまらなく皮肉に響きます。

使い方の例:

  • You look like you've seen a ghost! What happened?(幽霊でも見たような顔をしているよ。どうしたの?)
  • He turned pale, as if he had seen a ghost.(彼は、幽霊でも見たように青ざめた)
  • One would think she had won the lottery.(宝くじにでも当たったのかと思うほどだった)※One would think の例

5. at short notice ―「即座に、その場で」

Romance at short notice was her speciality.

意味: とっさに作り話をするのが、彼女の得意技だった

at short notice は「急な知らせで」「すぐに、その場で」という意味です(アメリカ英語では on short notice)。そしてここでの romance は「恋愛」ではありません。もともとの「空想的な物語、作り話」という意味です。

叔母に「あの人はどうしたの」と聞かれたヴェラは、平然と答えます。「スパニエルのせいよ。ガンジス川のほとりで野犬の群れに墓地へ追い込まれて、掘りたての墓で一晩過ごしたんですって」。沼の悲劇も、窓を開けておく理由も、すべてはその場で作った話だったのです。物語全体をひっくり返す、見事な最後の一行です。

使い方の例:

  • Thank you for coming at such short notice.(急なお願いにもかかわらず来てくれてありがとう)
  • I can't change my plans at short notice.(急に予定を変えることはできない)
  • The meeting was cancelled at short notice.(会議は直前になって中止された)

おわりに

『開いた窓』は、読み終えたあとにもう一度最初から読み返したくなる作品です。ヴェラの台詞は、嘘だとわかってから読むと、まったく違う表情を見せます。LITIM では、本文の単語をタップすると意味を確かめながら読み進められます。サキの仕掛けを、ぜひ本文で確かめてみてください。

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